森喜朗氏の東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長からの辞任及び解任を求める声明
2021年2月10日
青年法律家協会岡山支部
支部長 弁護士 呉裕麻
1 森喜朗氏による女性差別発言
公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(以下「TOCOG」という。)の森喜朗会長(以下「森氏」という。)は、本年2月3日の日本オリンピック委員会の臨時評議員会において、「女性がたくさん入っている理事会が時間がかかります。」「女性っているのは優れているところですが、競争意識が強い。誰か一人が手を挙げて言われると、自分も言わないといけないと思うんでしょうね。それでみんな発言される。」「女性を増やしていく場合は、発言の時間をある程度、規制を促しておかないと、なかなか終わらないので困る」「私どもの組織委員会に女性…7人くらいおりますが、皆さんわきまえておられて」と発言した(以下「本件発言」という。)。
本件発言は、女性の発言は長く、また、女性はみなが発言するため会議に必要以上に時間がかかると性差のみを理由に断定するものであり、女性差別そのものである。また、女性は発言をわきまえるべきものと断定することも、男尊女卑の思想に基づく発言であり、やはり女性差別に他ならない。
このような森氏による本件発言は、憲法14条が定める平等原則及びオリンピック憲章やその理念に反するものである。
2 森氏による「謝罪会見」での発言
森氏は本件発言を踏まえ、その翌日には自身の発言を「撤回」し、「謝罪」をした。他方で発言の責任をとってTOCOG会長を辞任する考えはないとした。
この会見において森氏は、記者からの質問に答えず逆に記者に質問をし返したり、質問に対してはぐらかす回答をしたり、「面白おかしくしたいから聞いてるんだろう。」と不機嫌な様相を示したりするという極めて不誠実な態度であった。
このような森氏の言動からは、森氏が本件発言について本当の意味で反省し、謝罪をしていると捉えることはできない。
3 本件発言を踏まえたTOCOGの対応
同月7日、TOCOGはその公式ウェブサイト上に「弊会の先週の森会長の発言はオリンピック・パラリンピックの精神に反する不適切なものであり、会長自身も発言を撤回し、深くお詫びと反省の意を表明致しました。」との見解を掲載した。
しかしながら、前項で述べたとおり森氏はそもそも「深くお詫びと反省の意を表明」したとは到底認められない。
また、そもそもオリンピック憲章の「オリンピズム根本原則」第6項には、「オリンピック憲章の定める権利および自由は・・・性別、性的指向・・・などの理由による、いかなる種類の差別も受けることなく、確実に享受されなければならない。」と定めている。
さらに、IOC倫理規定には尊重すべき「基本原則」として「人権保護の国際条約がオリンピック競技大会での活動に適用される限り、 それを尊重すること。 特に以下のことを保証すること」とし、「人間の尊厳を尊重すること」「・・・性別、性的指向・・・などの理由による、いかなる種類の差別も拒否すること」「あらゆる形態のハラスメントを拒否すること。それには身体への、職業上の、あるいは性的なハラスメントが含まれる。」と定めている。
これらの基本原則に照らすと、森氏がいくら後日、本件発言を「撤回」し、「謝罪」したところで、森氏がTOCOGの会長をこのまま継続することは到底許されるべきことではない。
4 まとめ
以上のとおり、森氏はTOCOGの会長としてふさわしくないことから、青年法律家協会岡山支部は森氏に対し、会長からの即時辞任を求め、TOCOGに対しては森氏を即時解任するよう求める。
以上