「岡山県家庭教育応援条例(仮称)」についてのコラム(2021.11.29 岡邑 祐樹会員)
このたび,岡山県の条例として「岡山県家庭教育応援条例(仮称)」の制定が準備され,パブリックコメントが募集された。
この条例は上辺だけみると家庭を応援するということでとてもよいことが書かれているように見える。
しかしその内容は,むしろ,日本国憲法の掲げる個人主義(憲法13条)に反するものである。
具体例を3つ挙げる。
1 第1条(目的)は,「子どもが将来親になるために学ぶ」という理念を掲げているが,ライフスタイルは各家庭や各人によって自由である。子どもが将来親になるために学ぶことを押しつけることは,そうでない県民に対してスティグマを与え県民を分断するものではないだろうか。
2 第3条(基本理念)第6条(保護者の役割)は子どもの教育について第一義的責任を有するなどと,規定した上で,自らも親として成長すべきなどと規定する。そもそも,子どもの教育については国家が義務を負うと考えるべきである。親に子どもの教育の内容について関与する権利があるのは言うまでもないが,その点を義務とするのは誤りである。加えて「親も成長」というのは大きなお世話と言うほかない。
3 第4条(県の責務)で県が前条に定める基本理念を守るために体制を整備するなどの責務を規定するが,本来県が県民の子どもに対しヒトモノカネのインフラを整備すべき厳然たる責務がある。これは,その責務を放棄し,あたかも県のすべきことを親にアウトソーシングするようなものである。これは本来国が全勢力を傾けて子どもの貧困対策に当たらないといけないにもかかわらず,それを,民間の子ども食堂に頼ってそれを支援するようなものである。
以上の点から,本条例は廃案となるべきである。仮にこのような条例案が通るのであれば,先の選択的夫婦別姓に反対する意見書を岡山県議会が採択したのとあわせて岡山県民の恥となると言わざるを得ない。