ラグビーワールドカップとナショナリズム(2019.10.21 呉 裕麻会員)
ラグビーワールドカップが日本で開催されています。どのチームも持ち味を活かしながら、善戦しています。日本代表も素晴らしいチームプレーにより、予選で4勝し、決勝トーナメントに進出するという目の離せない戦いを繰り広げてくれました。残念ながら決勝トーナメント1戦目で南アフリカに敗れたものの、ラグビーファンならずとも、この度の日本の戦いに多くの影響を受けたことでしょう。
ところで、日本代表に限らず、ラグビーではあらゆる代表チームに「外国籍選手」が混在しています。これは、当該代表チームの国籍を取得せずとも当該代表チームの代表になれるということです。
具体的には、ラグビーでは、①当該国で出生している、②両親、祖父母の1人が当該国で出生している、③プレーする時点の直前の36ヶ月間継続して当該国を居住地としていたという3つの要件のうちいずれか1つを満たすことで当該チームの代表になれるというルールを採用しているのです(ただし、③については60カ月に延長されることが決定済み)。
このようなルールの下、ラグビーでは日本に限らず、多様な国籍や出自の選手がひとつの代表チームを編成し、ワールドカップを戦っているのです。
中には、外国籍選手が多いことに対して苦言を呈する向きもあるようですが、多くの受け止めはそうではないようです。
私個人としては、ラグビーに留まらず、日常生活においても、実際の国籍を問うことなく、同じ地域に住み、生活する市民に対して、誰もが「一市民」として穏やかに生活でき、決して「国籍が異なる」ということで排除されたり差別されたりしない世の中が実現して欲しいと思っています。
それこそが、憲法14条で保障される平等にほかなりません。
また、人種差別撤廃条約1条1項においては「人種差別」の定義として、「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう。」と定められていますが、ラグビー日本代表という立場においても、このような意味での人種差別がされないことが期待されています。
ラグビーワールドカップというスポーツの祭典が、私たち市民の心の中にある差別意識解消の一助になるのではないか、そんな期待も持ちながら次の日本戦を応援するつもりです。