憲法9条改正に反対する(2018.3.28 呉 裕麻会員)
平成29年12月20日に自由民主党憲法改正推進本部において憲法改正に関する論点とりまとめ(以下「論点とりまとめ」という。)が公表された。その中では、憲法9条改正の方向性について下記のとおり整理がなされている。
また、かかる論点とりまとめを踏まえ、最終的な自民党案の集約が進みつつある。
記
(1)自衛隊について
自衛隊が我が国の独立、国の平和と安全、国民の生命と財産を守る上で必要不可欠な存在であるとの見解に異論はなかった。
その上で、改正の方向性として以下の二通りが述べられた。
①「9条2項を維持した上で、自衛隊を憲法に明記するにとどめるべき」との意見
②「9条2項を削除し、自衛隊の目的・性格をより明確化する改正を行うべき」との意見
なお、①及び②に共通する問題意識として、「シビリアンコントロール」も憲法に明記すべきとの意見が述べられた。
①は、何としてでも9条改正を実現したい安倍首相が、国民の受け入れ易さや、公明党に配慮した結果の案である。②は、従前からの自民党の改正草案にも沿うものである。
ところでこの間、安倍首相は、集団的自衛権行使容認の閣議決定を行い(2014年7月1日)、安保関連法案を強行で成立させている(2016年9月19日)。これらの結果、自衛隊の活動範囲や役割は、従前のそれから大きく逸脱する結果となった。そして、我々は、このような流れの中で、この度の9条改正議論が展開されていることを忘れてはならない。
すなわち、安倍首相は、安保関連法により、集団的自衛権の一部容認を実現したところであるが、今後はこれをさらに拡張し、自衛隊の活動をいわゆる軍隊のそれに近づけようとしているのである。言い換えると、安倍首相は、無制限の集団的自衛権を目指しており、そのために9条改正を実現しようとしているのである。
具体的には、①の案をベースにすると、あり得る改正条項としては「国は、自衛のための必要最小限度の実力組織としての自衛隊を保持する。」などというものが予想される。仮にかかる改正が成立すれば、結局、「必要最小限度」とは何かが議論となり、そこには限定されない集団的自衛権を含むのだ、との拡張解釈が展開されることが明らかである。
このように、安倍首相が目指すところを考えると、やはりそもそも9条改正についてはいかなる案であろうとも容認してはいけないことが良く分かる。
「軍隊の保持ではないから構わないではないか。」とか「2項は削除しないのだから構わないではないか。」という発想は、9条を改正し、その後の拡大解釈を目論む安倍首相の思う壺である。
我々は、安倍首相が、従前からの自衛隊や自衛権についての解釈を自分の都合の良いように捻じ曲げたことを決して忘れてはならない。
今ここで9条の改正を許せば、行きつく先は自衛隊の軍隊化、無制限の集団的自衛権、戦争する国=日本、である。やはり、9条改正には断固反対である。