共謀罪に大反対する(2017.5.8 呉 裕麻会員)
1 共謀罪に反対する
安倍政権が成立を目指している「共謀罪」に大反対である。
政府は、「テロ等準備罪」との名称を用い、「テロ対策のための法律だ」と宣伝している。
しかし、実際の法案は、個人の内心処罰を目的とした「共謀罪」そのものである。
そして、共謀罪成立の真の目的は、警察権力の拡大にある。法案が通ればあらゆる個人のプライバシーが丸裸とされ、監視社会が訪れる。
私たちは、内心の自由や、プライバシー権といった憲法上の人権を守るために、断固として共謀罪に反対しなくてはならない。
2 共謀罪と憲法、刑法上の問題点
近代刑法では、①罪刑法定主義、②行為処罰の原則、③既遂処罰の原則といった重要な概念のもとに、犯罪と刑罰が定められている。これらはいずれも憲法における個人の自由を根底にするものである。
しかし、共謀罪はこれら原則に真っ向から反している。
まず、①罪刑法定主義は、「何が罪となり、その罪を犯すとどのような刑となるかあらかじめ法律で明確にしておくこと」を意味する。これにより、人は、自分がどのような行動をとるとどのような刑に処せられるのかを事前に知ることができるのである。
しかし、共謀罪では、単に「計画」を犯罪として扱っており、具体的にどのような計画をしたら刑に処せられるのかが明確ではない。
次に、②行為処罰の原則とは、「法律で人を処罰するのは、原則として人が何か具体的に危険な行動に出た時だけであり、危険なことを考えただけでは処罰してはならないこと」を意味する。これは憲法の思想良心の自由を刑法上も具体化したものである。
しかし、共謀罪は、人が具体的に危険な行動に出なくとも処罰の対象としており、まさに思想良心の自由を侵害することとなる。
さらに、③既遂処罰の原則とは、「法律で人を処罰するのは、原則として具体的な行動に基づき、法益侵害が生じた場合に限られること」を意味する。これは、刑法が他人の権利を侵害したことに対するペナルティであることから当然のものである。
しかし、共謀罪は、具体的な法益侵害がまったく生じなくても処罰の対象とするものであり、過剰なペナルティに他ならない。
このように、政府が成立を目指している共謀罪は、憲法上の人権を侵害するものであることは明らかであるし、刑法上の諸原則にも真っ向から反している。
3 政府のまやかし
それにもかかわらず政府は、「テロ対策のために必要である」との説明を繰り返し、共謀罪を成立させようとしている。
しかし、そもそもこの度の法案自体、テロとまったく無関係な犯罪をも共謀罪の対象犯罪に含めていること、テロ対策のための個別の法律はすでに多数存在することなどからしても、政府の説明がまやかしであることは明らかである。
「共謀罪の対象は、組織的犯罪集団に限られるから一般市民には関係ない」との説明についても、そもそも組織的犯罪集団の定義自体があいまいに過ぎるし、国会答弁でも明らかになったように労働組合などが途中から組織的犯罪集団として認定される可能性もある。
もっといえば、組織的犯罪集団に該当するか否かを判断するためには警察による盗聴などの捜査活動が実施されるのであり、当然、一般市民も捜査の対象に含まれる。
4 結論
このように、政府が成立を目指す共謀罪は、どの角度から分析しても到底容認できるものではない。このような法案に反対の声を挙げていかなければ、個人の自由は一つ一つ奪われ続けることとなる。そして、真綿で首を絞められるようにして、気が付いた時には個人の自由は一切奪われてしまっているだろう。
私は共謀罪に大反対である。