通信傍受法の拡大について(2015.4.3 莖田 信之会員)
平成27年3月13日、通信傍受の対象を拡大する刑事訴訟法の改正案が閣議決定されました。まず、通信傍受ですが、これは捜査機関が犯罪捜査をするために電話の内容を盗聴するものです。この捜査機関が盗聴する対象を拡大するという法案の閣議決定がされたのです。
通信傍受法の拡大と題したように、既に通信傍受法(正式名称は「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」です)という法律があります。現在の通信傍受法は対象犯罪を①銃器犯罪、②薬物犯罪、③集団密航、④組織的殺人の4つの類型の犯罪だけを対象にしています。犯罪捜査に役立つのであれば、盗聴をすることも仕方がないと思われる方もいるかもしれませんが、盗聴というのは、電話での通話内容などを知らないうちに聞かれるものであり、プライバシー侵害の甚だ大きなものです。
そして、憲法21条2項は、「通信の秘密は、これを侵してはならない。」と定めており、通信の秘密は最大限尊重されなければならないものです。
この通信の秘密とプライバシーの侵害があるからこそ、対象犯罪を4つの類型に限定しているのです。それが、今回の閣議決定では監禁罪、詐欺罪、そして窃盗罪といった犯罪にまで対象が拡大されています。
特定秘密保護法が制定され、さらには、通信傍受法の拡大、共謀罪の制定など、国民の権利が制限される方向への動きがあります。これら政府の動きをしっかりと見極め、日本がどのような方向に向かっているかを一人一人が考え行動する必要があります。