◎沖縄独立目指して住民投票実施を!
―スコットランド、カタルーニャ、ケベックを参考に
―“居酒屋独立論”からの脱却へ
(2017.3.7 古謝 愛彦会員)
1 沖縄の民意無視の新基地強行
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設で、日本政府は2017年2月6日、海上の本体工事に着手した。
沖縄県内で最近行われた選挙において、辺野古新基地建設反対の民意は明確に示されている。それにもかかわらず、日本政府は沖縄の民意を一切無視した。
昨年12月13日、名護市の浅瀬で垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが墜落した際も、県民の安全を無視して、わずか6日後に飛行を再開。1月6日には墜落の直接の原因となった空中給油訓練も再開している。この間、日本政府は一切、沖縄の不安の声に耳を傾けようとしなかった。
また、米軍北部訓練場(東村高江など)の新たなヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設をめぐっては、工事車両の搬入を阻止するために抗議している人々に対する強制排除など、人権侵害が恒常的に続いている。
もはや沖縄の民意を反映させる方法はないだろうか。
2 スコットランド独立のための住民投票
記憶に新しいが、2014年9月18日、英国の一部であるスコットランドにおいて、英国から独立するか否かの住民投票が行われ、反対派が辛勝した。
この住民投票において、賛成派が勝利する可能性が高まったことに慌てたキャメロン首相(当時)は、投票3日前になってスコットランドを訪れ、「最大の分権化を確約する」と表明。投票反対を懇願した。すなわち、スコットランドの人々は、現状、独立は勝ち取っていないものの、スコットランドの自治権拡大は勝ち取ったのである。
スコットランドでは、2016年6月の英国のEU離脱国民投票の際、EU残留派が多数を占めた。そこで、独立国スコットランドとしてEUに加盟するため、英国からの独立を目指す2度目の住民投票を実施する動きも出てきている。
スコットランドには、英国で唯一の核基地、グラスゴーの原子力潜水艦基地があり、当然、独立すれば核基地を撤去することとなる。スコットランド独立の住民投票には、基地撤去問題も絡んでいるのであり、沖縄と共通する。
3 カタルーニャ、ケベック
独立投票の時期、スコットランドに、スペインのカタルーニャ、カナダのケベックからも、市民運動家が終結した。いま、スコットランド独立派と交流を持ち、ノウハウを伝達しあうネットワークが構築されつつある。
スペインのカタルーニャでは、2015年9月の州議会選挙で、独立派が議会の過半数を制した。そして、ことし9月には、スペインからの独立を問う住民投票を実施する方向で動いている。
カナダのケベックは、独立住民投票では“先輩格”である。1995年10月の住民投票では、賛成・反対が拮抗したが、僅差で独立が否決された。
いま、世界では、自分たちの権利として自分たちの政府をつくる、つまり「人民の自決権」を実現しようという大きなうねりが生じているのである。
4 “居酒屋独立論”からの脱却へ
沖縄では長年、独立論は“居酒屋独立論”、すなわち、居酒屋で米軍や日本政府への愚痴を語り、アジアとの交易で栄えた琉球王国への郷愁を覚える際に持ち出される議論に過ぎず、夢物語として捉えられてきた。
しかし、昨今の日本政府の沖縄に対する非道な仕打ち、世界のうねりをみると、もう、“居酒屋独立論”は脱却できる。日本政府への怒りは独立へのエネルギーになるし、独立のために参考となる方法論は世界のあちらこちらにある。
米軍基地の撤去を望む「オール沖縄」の民意を反映させるために、沖縄の独立を問う住民投票の実施を目指そう!
(参考文献)
・「沖縄と『地域から成る東アジア』-スコットランドと欧州統合からの示唆」
島袋 純(琉球大学教授)
・「暴力に抵抗する主体・沖縄―記憶をつむぎ、アジアを構想する」
新垣 毅(琉球新報東京報道部長)
・「歴史、国際法、人権保障」
阿部浩己(神奈川大学法科大学院教授)
以上、進藤榮一他編「沖縄自立と東アジア共同体」(2016・花伝社)所収
・「マルチナショナル連邦制―不確実性の時代のナショナル・マイノリティ」
アラン=G・ガニョン著(丹羽卓訳)(2015・彩流社)