JAつやま残業代未払い事件と「管理監督者」(2016.6.22 則武 透会員)
本年2月、214名にも及ぶ原告の残業代未払請求の裁判を提訴しました。
原告のみなさんは、いずれもJAつやまに勤務する労働者です。JAつやまでは、長年、残業代の未払いが常態化していました。労働組合は団体交渉での解決を模索していましたが、JA側はタイムカードの提出を渋ったり、末端管理職に過ぎない代理級職員を管理監督者にする職員規程の変更を一方的に強行したりするなど、まともに対応しませんでした。そこで、やむなく提訴したのがこの事件です。
私も、これまで多くの残業代未払事件を扱ってきましたが、これだけ多数の労働者が原告となる事件は初めてです。しかも、県北の農村に勤務する労働者が訴訟に立ち上がることは大変に勇気のいることだった思います。それだけ、JAつやまの労働者の皆さんが苦しめられてきたということだと思います。
ところで、単なる末端の中間管理職を管理職というだけで管理監督者(労基法41条2号)にして残業代の支払いを免れることが他の企業でも横行しています。しかし、本来、管理監督者とは、自分の労働時間を自由に管理できるレベル、すなわち経営者と同じ高い地位にある労働者のことを指すものです。マクドナルドの「名ばかり店長」が管理監督者に当たらないとされた東京地裁判決は皆さんの記憶に新しいことと存じます。これから始まるJAつやまの事件でも、この管理監督者をどのように考えるかが中心的な争点の一つとなるでしょう。
今、安倍政権は、一定の年収以上のホワイトカラー労働者には残業代を支払わなくてもよいとする「残業代ゼロ法案」を国会に提案しようとしています。しかし、むしろ日本の労働問題の焦眉の課題は、過労死に至るような長時間過密労働をどのように根絶するかであり、「残業代ゼロ法案」は問題を解決するどころか、さらに深刻化させることにつながるものです。
是非、今回のJAつやまの事件を機に、長時間過密労働の根絶を共にお考え頂きたいと存じます。