待機児童問題と男性の育児参加(2016.5.26 古謝 愛彦会員)
ことし2月、「保育園落ちた日本死ね!!!」ブログが注目され、待機児童問題があらためて注目された。
ことし4月には、千葉県市川市で、開園予定の私立保育園が「子どもの声がうるさい」との近隣住民の反対を受けて、開園が断念されたとの報道があった。
現在6歳と1歳の2人の子どもを育てる父親として、この問題について考えるところを一言述べたいと思う。
1 #保育園落ちたの私だ
ことし4月から、妻が職場復帰することとなり、1歳の子どもを預かってもらうため、保育園を申し込んだ。
ところが、残念ながら保育園はいっぱい。「#保育園落ちたの私だ」となった。
今どのようにしているのかというと、一時保育という制度を利用し、保育園に空きが出るのを待っている。
一時保育制度は、保育園の一角などにある子育て支援センターで、週3日程度、短時間、一時的に保育してもらえるという制度である。
いま、1歳の子どもは、週3回、午前9時から午後1時までの4時間、預かってもらっている。妻は職場復帰したが、その時間しか仕事ができていない。
この一時保育を利用するためには、1か月前から予約をする必要がある。そして、予約が少しでも遅れた場合、一時保育すら定員いっぱいとなって利用できない。だから、1か月先の一時保育の予約電話をするのが日課となっている。
実は、上の子どもが1歳だった5年前にも、3か月くらい一時保育を利用していた。しかし、その時は一時保育のほうは定員に余裕があった。今は5年前より待機児童の状況がひどくなっているのが実感できる。
2 男性の育児参加
上の子どもが1歳の時、私は、半年ばかり、“専業主夫”だった。そのとき、たまに児童館などで行われるイベントへ1歳の子どもと一緒に参加していた。
しかし、参加するのはほとんど母親。父親がほとんどいなくて、恥ずかしかった記憶がある。
司法修習生になり、弁護士になってからも、上の子どもが突然病気になって病院へ連れていく必要が生じた場合、妻ではなく私が子どもを病院へ連れて行くこともあった。当然、仕事などを調整する必要がある。
昔、ある知人男性が、会社で育児休暇を取得しようとしたところ、やんわりと取得を断念するように言われ、それでも頑張って育児休暇を取得して職場復帰したところ、職場で冷遇された、との話を聞いたことがある。
もし、自分が、通信社記者を続けていたとして、今のような育児を実現できているかは疑問である。
最近、企業が男性の育児参加を促すため、男性会社員に育児休暇を取得させている、というニュースに触れることがある。しかし、会社の都合で育児休暇の日程が定められていないか、注意する必要がある。育児休暇の日程を決めるのは男性会社員自身である。そして、子どもが急に病気になったとき、父親である男性会社員が自由に仕事を休めるかが、男性育児休暇制度が会社に定着しているか否かのバロメーターになると思う。
3 ワークライフバランスの実現を
私が弁護士を目指した理由の一つに、労働者が会社に拘束されて長時間労働で心身を病んでいく現状を打破し、ワークライフバランスを実現できる社会を作りたいというのがある。
待機児童問題は重要で、保育園が増えてほしいとは思う。
しかし、保育園開園には近隣住民との関係、保育園と幼稚園との関係などなど、さまざまな困難があるし、保育園や保育士が増えないまま、保育園の定員だけ増やされては、子どもの安全面から問題がある。
社会全体が男性の育児参加を強力に推進することで、保育園の入園希望者の増加に歯止めがかかれば、結果として、待機児童問題の改善につながるのではないか。
そのためには、社会に根強く残る「男は仕事、女は家庭」という固定観念を打破する必要がある。
男性も女性も、仕事も家庭も頑張る社会を。
ワークライフバランスの実現に向けて、弁護士として、一人の父親として、努力していきたいと考えている。